そう。それをまた再利用して、みんな作っとんねん。面白いんで、あれ作ってみようって。

あんなんでな、自分でしたら結構面白い。楽しいしな。

Inatoshi Shidama: Interview 

「みんな使えるんやけど、使い方を知らんだけや」

師玉稲俊(しだま・いなとし)




師玉: 暑いな。

ジャック: 今日、暑かったねえ。

師玉: ほんまに散歩歩くだけでも大変。犬も嫌がって、でもってそこへ行って、すぐ帰ってきようと。

ジャック: 家に帰りたいって。

師玉: 連れが来る予定だったから。出てきたけど。

ジャック: そっかそっか。

師玉: どこ行ったかわかんない、畑でも行ったんやろか。

ジャック: 古堅君も琉球との繋がりがあるよね。

師玉: どこ?

古堅: 僕の父親の両親が那覇出身です。

師玉: どこ?どこ出身? 

ジャック: 那覇です。沖縄の那覇。

師玉: だいぶ離れてる。

ジャック: 奄美から?

古堅: そうですね。

ジャック: 小豆島より近いけどね。

師玉: 小豆島よりは近い。でも泳いではいけんど?

古堅: そうね、船ならね。

師玉: 昔なんか。あの、わすら(わしら)ちっちゃい時分はな、大島から就職へ行ったら那覇に行きよったのよ。

古堅: そうなんですか。

師玉: 琉球政府時代はな。

古堅: あぁ、琉球政府時代。

師玉: こっち来られんもん。

古堅: そうですよね。

師玉: うちの兄貴なんかはもう那覇で就職して、那覇で稼いで、やりおった。

古堅: そうなんですか。

師玉: もうわしらの代になったらこっちへ行ってきよったけどな。

古堅: それは、戦後ってことですよね。

師玉: そうそうそうそう。

古堅: 戦後すぐぐらい?

師玉: そうそう。戦後はもうみんな沖縄に就職しよった。こっち渡られへんもん。

ジャック: まだ国境が、復帰前?

師玉: そうそう。 ほんで、やっとわすら(わしら)が2期、3期ぐらいかな、就職して渡ってきたの。自分らは、言ってみればもう大阪の中山製鉱とかな、ああいう人の行かんような暑いとこ、みんな沖縄奄美から行きよって。
製鉱しようなんか。あんな火の中で仕事すんねん。

ジャック: 何年ぐらい奄美出たん?何歳ぐらい?

師玉: 奄美でわしは三級(整備士)をびっしりとってからの話やから、20歳ぐらいで出てきた。車の修理しとってな。 あの時分で修理言って、修理ちゃうで。 沖縄から車をバラバラで持ってきて。

ジャック: あ、バラバラにして?船で?

師玉: 船でもや。そやから車体もみんな自分で、エンジンに合わせて作りように。

古堅: すごいですね。

師玉: 運転席なんか木で作ってな。

ジャック: あぁ、そう!手作り。

師玉: そんなんでやりよった。

古堅: 車を直すっていうか、こう・・・・・・

師玉: 直すというか、作るのかな。 車体なんかみんなバラバラじゃん。エンジン乗せる台なんかバラバラやから、自分でエンジンに合わせて作らなきゃ。そんな時代。

古堅: そのバラバラの車は、いろんな所で買ってきたり集めたり?

師玉: スクラップみたいに積んで、沖縄からみんな持ってくんねや。 それを付け合わせて作りようにや。

古堅: すごいですね。

師玉: だから、忙しい忙しい。

ジャック:  スクラップに解体するのもかなり大変。

師玉: 解体するのにみんなぶち切ってやな、そのまま積んでくるやってんから。それを合わせて幅を縮めなあかんし、広げなあかんし。 エンジンも使ってな、みんなそのエンジンに合わせて自分で作らなあかんね。

古堅: もうなんかリサイクルですね。

師玉: そうそうそう。 バラバラできよった。だから車体はよそのやし、みんな外国の車体やしやな。

ジャック: アメリカとか?

師玉: そうそう。 それが済んでからやん。奄美沖縄が返還されてから日本の車が来だしてや。その時はもう格好だけは前ついてきよるやんか。あとはエンジンとかそんなんは、トヨタの車体に日産のエンジン積んだりやな。

古堅: すごいですね。

ジャック: でも知識は?どうやって車の勉強を?

師玉: そう、もう私ら坊主からもそんなことやっとったからやね。こっち来てからやったら、もうあんな修理屋っちゅうもんじゃないやん。わしらもう一からもう部品からやってる人間やからな。

ジャック: 部品を集めて?

師玉: ここやったらもう部品が来て、それ取っ替えや引っかえや。修理屋とちゃうやん。取っ替え屋やん。

古堅: 修理というか、部品を入れ替えてるだけに思えるんですね。なるほど、面白いですね。

師玉: やからキャブレターとかな、昔はディーゼルがなかったからな。キャブレターとかエンジンに合わせて、自分で作りよってん。 お店のエンジンじゃないから、そこにかましを入れてな。ここのキャブを持ってきて合わせるんやから、その間のジョイント自分で作って。

ジャック: 鉄とかで?だから溶接もできるんだね。

師玉: そう、なんでも自分でせなやっていけん時代やってん。

古堅: すごいですね。 しかも、全然いろんなものを無駄にしないっていうか。

師玉: そうそうそうそう。だからこっち来た時なんかもう、修理屋いうたらわしらが行ったら大喜び。今話したみたいに取っ替え屋とちゃうやん。部品が入ってきてそれ交換して、はい直りましたとちゃうからな。キャブをみんなバラして、自分でみんなやりよったから。

古堅: すごいですね。 

師玉: 自分は腕前がいいって言われてた。

ジャック: へぇ。家族みんなそういう感じ?

師玉: 違う違う。わし1人。

ジャック: どうして?

師玉: 修理屋、機械物が好きやからやん。

ジャック: へえ。

師玉: ほんでこっち来たらもう3級整備士なんか、もう2年もそりゃあ。そこで3級整備士の免許、タダみたいなもんなん。

古堅: そうなんですね。

ジャック: 3級整備士は修理の免許?

師玉: うん。

ジャック: トラックのお仕事はそのつながり?車の修理から?

師玉: いやいや。こっちで大阪来てからな。ちっちゃいガラス屋の原料、砂にを薬品を入れて混ぜるとガラスになって、大きいガラスのコップ吹いたりするガラスを釜で溶かすやん。そんなんほとんど砂やねん。

古堅: 砂なんですか?

師玉: あれは、そう。

ここの辺の砂は鉄が混ざってる砂やから、茶色いガラスしかできへん。外国の砂やったら、砂漠の砂なんか、鉄分が入ってないから透明のガラスになる。

ここの辺でも、日本海の砂は板ガラスみたいになるんだけどな。

古堅: ガラスって砂なんですね。

師玉: そう、ほとんど砂。

そこに薬品がちょっと入って、色付けたり粘り気を出したりするのに薬品が入るだけ。それをやってたとこが、ちっちゃい会社だったけど、従業員が1人か2人しかおらん。親方がその砂を混ぜると、すぐ煙が出てな、その埃を吸ってガラス屋の人間がみんな肺がんなってもうてね。

それを代わりにやりだしたのがうちの今の会社。みんなミキサーで混ぜて配達して。運送を運ぶ人がおらんから、そんなら車買うてわしが配達するわっていうのが始まりで運送屋になった。

ジャック: それで配達かぁ。ガラスを運ぶトラックとの関係性で。

師玉: あとは遊び半分に拭きガラスをしたりな。

ジャック: ここにもきれいなガラス。今泊まっているところのティッシュの箱は師玉さんの手作り。すごいきれいに作ってます。

あれも物の再利用?

師玉: そうそう。

ジャック: 色は、瓶とかを集めて?どうやって色を付けてるの?

師玉: 違う違う、あれはな、今はこの大きいガラスを、ステンドガラス用に商売してる人がおんねや。それを1枚売るやん。1枚ではガラス飾りにならんから、ステンドガラスの傘を作るのに10枚ぐらい買うやん。
そんな、売るだけ売ってやる人が飽きてくんねん。仕事が細かいから。そのクズがみんなわしのところにくる。

ジャック: ガラスをクズを師玉さんにくれるの? 

師玉: そう。それをまた再利用して、みんな作っとんねん。面白いんで、あれ作ってみようって。

ジャック: 面白いね。最近、私も小豆島の材料を使っていろんな色を染めてるよ。ウバメガシとか、あとは胡桃。

師玉: あんなんでな、自分でしたら結構面白い。楽しいしな。

古堅: いいですね。

ジャック: 古堅君も絹の糸を染めて、綺麗な色を出してるね。

古堅: 僕も、玉ねぎの皮とか、食べ物の残りで糸や布を染めたりしてるんですよ。

ジャック: あと、バナナの皮も使ってるよね。

師玉: 大島紬は、山のテーチギ。独特な色の木があんねん。

ジャック: 上にあるピンクのシャリンバイだね。

古堅: あぁ、シャリンバイ。

師玉: あれをそいで、炊いて、汁をとって、それにつけて。ほんで泥で洗うて。ほんならもう泥染めになってもうて、色が変わってくる。ほんで抜けへん。

古堅: なるほど、泥で色を止めるんですね。

ジャック: 鉄分とか入ってるのかな。

師玉: 手も染まって。それしてみ、皮が剥けるまで1年ぐらい取れへんで。

古堅: 手も染まっちゃうんですね。 土の中に金属が入ってるんでしょうね。

師玉: その泥染めも、もうほとんどなしになって。何軒かやってるやろうけどな。

ジャック: 何軒か、ちょっとだけあるね。

古堅: 師玉さんは、そういう染めたりもされてたんですか。

師玉: わしらせんけどな。わしらは違う仕事について、車修理屋に入ったから。やから琉球政府時代のときに、わしら1期生、2期生で入ってんやん。琉球政府になって免許がいるようになってもうたからな。けど、わしら2期生、3期生まで、3級整備してるやつタダじゃ。2年も通ったらみんな3級整備士やん。

古堅: なんか制度が変わっちゃったんですね。

師玉: そうそうそうそう。ほんでこっち出てきたときは3級整備士しか持ってないから、やっぱり修理はできへんからな。親方なられへんからな。だけど、面白かったな。

古堅: そうなんですか。

ジャック: 再利用のプロですよ。わたしたちも再利用について作品作ったり勉強したりしてるけど。

師玉: それがまた面白いねんや、再利用が。

ジャック: 師玉さんが、雑草抜く椅子にきれいに車輪をつけてて。それを借りてる。すごいよ。 ずっと腰を曲げて作業するじゃん。腰が痛くないようになってる。手作りでしょう、あれ?

師玉: 遊ぶのが好きなんや。 ほんでみんなここらの人でもそうやって箱持ってきて座って草掻きするけでやな。あんなコマつけるだけでやな。勝手に向こう進めるからな。 溝の間に、うね上げた間に入って草が抜けるから。

古堅: すごい。発明ですね。

師玉: 遊ぶのが好きやから。

ジャック: パーツをいろいろ集めるじゃん。それから何か物を作る時間はどれくらい? 例えば、部品を解体していろいろ集めるのは?

師玉: 思ったらすぐ作るからやな。そんなんなんぼでも道端に転んでるやつで作るから。

ジャック: 他に欲しい人がないやつを。

師玉: だからステンドグラスなんかでもな。みんなステンドグラス言うたら花咲かしたりなんやかんや。照明の灯りやどうやらのばっかりされてるけどやな。
そんなん作る思ったら大変なんじゃ。ほんなら最初はわしは人のほかしたクズを拾ってきてな。最初作ったのティッシュケースじゃん。

ジャック: 素敵よ。すごい素敵。みんな好きだよ。 ティッシュの箱って、軽いから引っ張ったときに上がるじゃん。ケースを使うと箱を押さえてくれてちょうどいいよ。しかも飾りがきれい。

師玉: ステンドグラスで作ってあるから。

ジャック: 一枚ずつティッシュも取れる。綺麗だし、ずっと使ってるよ。

師玉: あのティッシュケースに花咲かしたりなんやかんやしてたら、まあよお売れるんだあれ。

ジャック: 売れるよ。

古堅: それも人がいらなくなったものでできてる。

師玉: みんなほかすやつ。ガラス教室でステンドグラス教室でな、先生が教えるけどやな。 その先生が素人でやってるからやな、クズをみんなほかしよんねん。

古堅: いらない人は捨てたいからね。ちょうどいいですよね。

師玉: ここでも小屋の中で作っとったけどな。ここらの人はそんな暇のある人、遊び人がおらんからな。一生懸命やからな。

古堅: 時間があるっていうことが大事なんですね。

師玉: 間違いない、遊び人が多いや。 5時に仕事帰ってきたらやな、8時9時までは間があるねんからやな。あんな細かい仕事は家でできるからな。

ジャック: あと道具が壊れたときもね。直すのがすっごい上手。長持ちに作り直せる。

師玉: あれを1つ。こんな箱1つあったらもう、どんどん何でもできる。


古堅: 夕陽も綺麗だね。

ジャック: 師玉さんは魚も詳しいよ。魚の動きもよく知ってる。昔、大阪から小豆島を船で通っていたんだって。  あとは何が大事かな。 思い出も大事だけど、今の再利用のやり方。

師玉: 自分が言うたことまで忘れる。

ジャック: ああそうか。でも、ずいぶん覚えがいいですよ。私も師玉さんと同じくらいの歳になったらいろんなことをすぐ忘れちゃうと思う。

師玉: なんかしとるやん。途中でもの言うたら忘れてもうとるやん。

ジャック: 師玉さんは海、うみんちゅすごく詳しいの。生物もナマコとかいろいろ。

師玉: この下で竿立てて、ここに堤防無かったんや。

ジャック: ここで竿を出してるの?

師玉: ここに竿立てて、2分か3分して一服吸って出てきたら、みんな魚がひっくり返ってた。

ジャック: そんなに多いんだ魚。

師玉: でも、これができたら魚が寄ってきへんや。

ジャック: 魚とか海藻は、浜の方がいいんだ。

師玉: そうそうそう。ほんで夜電気つけていたらナマコがその浜にいっぱい転がってる。

ジャック: 集まるの?

師玉: 今はもうナマコなんか採りに行ったかって、ナマコなんかおれへんやな。大体潮がかかってんやろな。 ナマコもおらんわ。

ジャック: 沖縄でもな、ナマコ食べるなあ。

古堅: 好き好き。広島でも食べるよ。

ジャック: 食べる? ほんと?

師玉: ナマコ、わしも初めてこっち来てから食べだした。

ジャック: あ、そうなの?奄美では食べん?

師玉: 奄美はそんな。

ジャック もう大量にある。徳之島はすごいよ今。海入ったらナマコがたくさんいる。 でも硬いね。ちょっと茹でてラバーみたいな。ゴム。

師玉: 硬いねや。こっちなんかやってみんな。こんなちっちゃいやつ。

ジャック: ああ、こっちの方が食べやすい?

古堅: たしかに。大きさが違うんですね。

ジャック: もう多い多い。生態系大丈夫?ってくらい。 徳之島は、去年とか海に入ったら、もうサンゴの間にナマコばっかり。

師玉: スリッパみたいなゴツイやって。あんなもん、かとうって(硬くって)食えん。

古堅: なるほど。

師玉: けど魚は釣れるで。

ジャック: 今なんか、あの辺に魚おる?あの動き。あれ何だろう。

師玉: ボラの子。

ジャック: ボラの子?  ちっちゃいやつね。ずっと動いてるよ。

師玉: 団子になってな。石掘り込んだら飛び出てくる。

古堅: ジャンプしますね。

ジャック: 群れになって一緒に動いてるね。

古堅: 本当だ。ボラはたくさんいますね。

師玉: 昔はここに竿を立ててな。タバコとかで一服しに帰って。 そのあと戻ってきたらみんな倒れてた。あれが、ウナギじゃなしに、あの・・・・・・

古堅: アナゴでしょ。

師玉: アナゴ。何本でも釣れよって。最近はアナゴなんか見たこともない。

ジャック: 冬も美穂のお母さんが来たとき、おいしい海藻食べたよ。

師玉: ワカメ?

ジャック: うん。綺麗に・・・・・・

古堅: 取れるんですか?

ジャック: そう。上手。

古堅: ああ、そうなんですね。すごい。

師玉: それも今年いっぱいぐらいやろう。帰ってこんな焼いてもらわないと。

ジャック: 来るよ。 夏はこっち来てないけど、冬に来たね。

師玉: こんなとこおったら、まあええで。静かやし。奄美なんかもっと静かやん。波の音は大きいけど。

ジャック: 台風も大きいでしょ。

師玉: 台風で、波なんかもうすごい音しよるん。あの、堤防がな。ちゃうサンゴがな。 建物の一階二階も全部使って展覧会をやってるところ。元岡山港行きの切符売り場。 いろいろあるよ。 本とか、写真とか、映像とか。

古堅: なんかぜひ興味があれば師玉さんにも展示してもらったり・・・・・・

ジャック: アップサイクル入れたいね。 台は今回、全部、廃木材を再利用してる。 古いもの。

師玉: あんな遊びが一番ええねんて。それこそ自分で考えてなんやかんや作ってな。

古堅: 今も何かされてるんですか、直したりとか。

師玉: 今は畑仕事が忙しいで、するところがない。たまに雨降ったり暇したら、ステンドグラスやってる。ステンドグラスでも、大阪行ったらガラスやってる人が、くずを作るやん。なんぼでもくずが出てくる。それを再利用するのにな、また色ガラスやから、ティッシュのあの四角いケース作ったりな。かぶせて、重しになるやん。ティッシュをとったら箱が付いてくるから、箱を押さえるのにな、カバーを付けてしたりしとったら、またそれが人気もんやねん。
それにガラスで花咲かしたりな。作ったらほんまになんぼでも売れるんやであれ。

ジャック: でもなんで売らないんですか。いろんなところに師玉さんが作ったティッシュケースがあったね。

師玉: 色んなものを作ったら、花咲かしたりなんやかんやしたら売れるのは売れるんやけど、邪魔くさいし、それより百姓の方が忙しい。遊ぶことなんぼでもあるからな。 朝起きたら罠見に行かなあかんし。

古堅: 色々修理するものもたくさんあるんですか。

ジャック :イノシシの罠とか、みんな直してもらいに来るね。

師玉: ワイヤーでな、罠を作る。 やっぱり道具がいるからな。

ジャック: 難しそう、あれは。

師玉: ワイヤーが硬いからな。よう作れん。 畑の入り口やったらワイヤーなんか山積みになっとる。修理するのに。罠掛けるのだけは自分でしてな。 イノシシがかかってまたクシャクシャになって、それ直すのにみんな わしんとこ持ってくる。 ほんで身だけ取って食うてな。 イヌシシの肉はおいしいで。 取るだけ取ってな。捌くことせえへんや。

古堅: 捌くのが大変そうですね。

師玉: みんなこうやってこって置いてある。 これにつけて。足穴あけて引っ掛けて引っ掛けてな。上から積んで。 ほんで上から顔見てきて。下に受け作っておいて、腹出して。あと身だけにして。 それやったら肉に血がつかんからな。そのまま捌ける。いっぺん寝かすと中山の連中はみんな寄ってたかってやるけどやな。 血まみれになってもうて。そんであの血が取れんのや。 こっち来てからいろんなことしとるん。

古堅: いろんな、忙しいちゃうんですか。

ジャック: いい意味でね。

師玉: 大阪なんか肉送ってみんな取り合いやな。

古堅: そうですよね、珍しいですからね。

師玉: そんで田舎もんが多いやん、大阪は。わしとかの隣近所は団地の前に市営団地があるから、そこにおる人がな、香川県の人が多いんねや。 ほんでもう昔はもうイノシシなんか小豆島おらんへんかったものが。この10年やで、イノシシがこんだけ増えたの。

古堅: 渡ってきたんですか?

師玉: うん。今はもう、最近はまだ減ってるで。

古堅: へえ。鹿もいるんですか?

師玉: 鹿は昔からおる。ほんでも年間にすりゃ、なんぼ50万ぐらいは捕まえるで。イノシシ。 捕まえるだけで町から金が出る。

古堅: 尻尾だけ?

師玉: ちゃうちゃう、写真写す。町に電話したらすぐ写真写してくれる。ほんで実身はみんな捌いてな。もう、鉄砲で撃ったらすぐ吊るもん。 血抜きして。ほんなん、もう美味しい肉がとれる。

古堅: ちゃんと食べてあげるのいいですね。

師玉: そうそう。でも年いって硬いやつは、そのまま電話すりゃあ町がな、回収に来よる。要るときだけな。 捌く小屋なんかクレーンまでついてる。ビーーって。

古堅: 捌く小屋も全部作られたんですか?

師玉: そうそうそうそう。

古堅: へえ、すごい。

ジャック: 上に。

師玉: 畑にな。

ジャック: あの干し柿とかある、あの辺?

師玉: あの小屋。あれ上から吊るようにクレーンついてある。

ジャック: ああ、あれ。イノシシのため。

師玉: ほんで今から干し柿や。

ジャック: うんうんうん、秋ね。楽しいね。

古堅: その小屋も一から作ったんですか。

師玉: そうそう。昔はここらな、あの鉄骨のハウスがいっぱいあってやん。今は潰してハウスはないけど。その鉄骨拾ってきてな。 やから畑の小屋も何もみんなわし一人で作って。

ジャック: 全部手作り。

師玉: 炊事場から何からみんなついとる。

古堅: それもじゃあいろんなところの廃材集めてきて。

師玉: そうそうそうそう。全部廃材。

古堅: すごい。

ジャック: 綺麗に。

師玉: 電気だけを引いた。でも昔の畑やからな。柱は建ってるからね、電柱は。 やから電気引く言ったら小屋の中に引くだけ。やから知れとったけえ。


 




謝辞

古谷美穂子

花岡美優

谷口創太郎